
Xiaomi Mi Note 10って光学5倍って書いてあるよね。

そうだね。書いてあるよ。でもね、ペリスコープじゃないから怪しいと思っていたんだ。
今回はここを深堀りしていくよ。
確かにMi Note 10に光学5倍と書いてある

まずは証拠写真を見ましょう。これですよ、これ。「OPTICAL 5X」と書いてあります。つまり、この望遠カメラは光学5倍だということです。しかし、そんなことがあり得るのでしょうか。

光学5倍で思い浮かぶのは、Huawei P30 ProやP40 Proです。光学5倍のような高性能な光学倍率を誇るには、これらのスマホのようにペリスコープ構造を用い、光を曲げ、その高い光学倍率を生む結果生じた長い焦点距離をスマホという狭い筐体におさめるためにこのような構造をとっています。ちなみに、Huawei P40 Pro+は光学10倍というスマホ界最強の光学倍率を誇るために光を5回も曲げるという超絶技巧を行っています。詳しくは、別記事「P40 Pro+の光学10倍望遠の謎を解明」をご覧ください。
さて、Xiaomiはこのようなペリスコープ構造をとっているかというと、答えはNOです。

ペリスコープ構造を用いると、プリズムや鏡で光を曲げるためカメラの形がGalaxy S20 ULTRAのように長方形になるので、長方形ではなく、円形のMi Note 10やMi 10 Proの望遠カメラはペリスコープ構造を取ってはいないのです。そしたら、なぜ光学5倍が可能なのでしょうか?
その秘密は小型イメージセンサーの採用と多少のごまかしによるものだと筆者は考察しました。
光学倍率と光学ズーム倍率
考察に入る前に、前提となる言葉の整理をしていきます。これがなかなか厄介なのです。光学5倍だとかで使われる倍率は、通常物理で使い、高校でも習った倍率である光学倍率(もっと専門的には横倍率という)とは異なり、光学ズーム倍率で定義されています。ただ、光学ズーム倍率を理解するのに光学倍率は必須なので、まずは光学倍率から考えていきます。

光学倍率は被写体がイメージセンサー上にどれくらいの比率で縮小できたかを示しており、上の図のB/Aに相当します。とても自然で受け入れやすい定義ですね。高校でやったレンズの倍率もこれでした。
この光学倍率をレンズの公式に代入し、整理し、近似すると(過程がわからなければ結果だけを理解すればいい)、光学倍率は焦点距離に比例することがわかります。つまり、焦点距離が大きいものほど、望遠の能力が高いということです。このことを理解すれば、光学ズーム倍率の理解は簡単です。

光学倍率はとても受け入れやすい定義なのですが、如何せん被写体とズームレンズの距離によって変動するので、レンズそのものの望遠性能を示すのは苦手です。そこで登場するのが、光学ズーム倍率です、スマホでの光学〇倍の倍率でもありますが、もともとは一眼レフのズームレンズにおいて用いられてきた用語です。ズームレンズはレンズ群同士の距離を変動させることで、焦点距離を変動させ、広角から望遠まで様々な画角で撮影することができるレンズです。そして光学ズーム倍率は広角と望遠レンズの光学倍率の比です、ズームなしと最大ズームでどれだけズームできるかなということです、自然な定義ですね。光学倍率が焦点距離に比例すると先ほどやったため、光学ズーム倍率は焦点距離の比で決まります。上の画像では例を載せましたので、例をみて理解して下さい。
スマホではズームレンズ搭載の機種はないのですが、複数のカメラを連続して使用し実質ズームレンズのような使い方をしています。この時メインカメラ(広角)を基準として光学ズーム倍率を考えていくのが普通です。(OPPOのように超広角を基準にする不届きものもいます、最近はハイブリット〇倍としかいいませんが)例ではP40 Pro+の焦点距離をもとに計算してみました。本当に光学10倍なので恐ろしいものです。
さて、ここまでわかれば、Xiaomi Mi Note 10、Mi 10 Proの光学ズーム倍率を考えていきます。焦点距離さえわかれば、光学ズーム倍率はおのずとわかります。Xiaomiのスペック表には書いてないのですが、Xiaomiがカメラレビューをお願いしている、DXOMARKに書いてあります。

こちらは、Mi Note 10のカメラスペックですが、メインカメラの焦点距離が25mm、第1望遠レンズの焦点距離が50mm、第2望遠レンズの焦点距離は94mmとなっています。

Xiaomi Mi 10も同様のカメラ構成をしていて、25mm,50mm,94mmとなっています。なので、同様に考えます。
まず、第1望遠レンズです。こちらはSelfie Cameraとも書いてありポートレートカメラとしても利用されるようです。こちらは50÷25=2で光学2倍望遠となっています。光学2倍はPixel 4やiPhone 11 Proなどにつけられている望遠レンズです。
そして、重要なのが、第2望遠レンズです、94÷25=3.76で光学3.76倍です。疑問点は二つです。1つ目は非ペリスコープ構造なのに、なぜ、光学4倍近くも出せるのかということ、そして、2つ目は光学5倍じゃないやん!!という点です。
これらはイメージセンサーのサイズに注目すれば疑問を解決できます。つづいては、イメージセンサーのサイズと焦点距離の関係について考えていきます。
イメージセンサーが小さいと望遠が強くなるのだ!!

イメージセンサーは人間でいう網膜の部分にあたります、大きければ大きいほど、光を集められる量が多いので、低照度撮影には強いのですが、画角が広くなり、望遠に弱くなります。しかし、イメージセンサーを小さくすればするほど、画角が狭くなるので、望遠が強くなるわけです。上の図を見れば一目瞭然ですね。なんだか、不思議ですが、これは本当のことなんですよ。
そして、このことはスペックに書かれる焦点距離にも影響を及ぼします。レンズ自体の焦点距離はレンズそのものの性質によりますから、変わりません、しかし、このようにセンサーサイズが変わると、実際の見え方は変わるわけで、カメラを使う側にとっては、どれくらいの望遠なのかぱっとわからないわけです、そこで一般的に使われているのが35mm判換算焦点距離です。

35mm判換算焦点距離は、そのカメラの望遠の度合いが、もしイメージセンサーサイズがフルサイズ(一眼レフなどで使われる巨大なもの)であれば、どれくらいの焦点距離なのかという、換算焦点距離です。
スマホでいうと、焦点距離94mmと書いてあれば、これは換算焦点距離なので、フルサイズの一眼レフで同じ画角の写真を撮るには94mmのレンズを装着しなければいけないということで、決して、そのスマホのレンズの焦点距離が94mmということではありません。9.4cmも場所がスマホにとれるわけもありませんしね。
そして、換算方法ですが、上の図の計算結果からわかるように、イメージセンサーの面積の平方根に比例します(形が同場合)。これは当然の結果ですね。計算しなくても、図を見れば直感的にわかります。
さて、ここまで見てくれば、Xiaomiのスマホの望遠が強いのがわかりそうです。

センサーサイズに注目して下さい。なんと、1/4.4ですよ。これはものすごく小さいです。たとえば、iPhone 11 Proの望遠カメラのセンサーサイズは1/3.4なので、Xiaomiの採用したセンサーサイズの小ささがわかります。1つ目の疑問の解答は、「光学4倍近くも出せているのはセンサーサイズが小型だから」でした。ちなみに、この1/4.4センサーでも800万画素を出せてるからすごいですが、この条件で調べるとOmniVisonのOV08A10がでてきました。ほんとにこれかはわかりませんが、興味ある方は見てみてください。
800万画素なのに500万画素??そうかそういうことだったのか!!
ここからは、名探偵になったつもりで見てください。すべてはこの推理のための前置きだったのです。ここまでの理論が理解できれば、はっと気づくでしょう。

気づきましたか?そうです。Xiaomiは800万画素センサーを500万画素センサーと言っているのです!!(DxoMarkはXiaomiが申し込んで審査してもらってるので、800万画素センサーなのは間違いないでしょう。間違えていれば訂正を要請するはずです。)どうゆうことかって?800万画素センサーのうち真ん中の500万画素までを有効なものだと考えているようです。となると、1/4.4の800万画素イメージセンサーはさらに小型のイメージセンサーとみなせることがわかります。

換算焦点距離は、面積の平方根にで決まるので、上の図の用に計算すると、500万画素望遠レンズの焦点距離は119mmとなり、メイン(広角)の25mmからのズーム倍率は4.76倍となります。
これだと、ほとんど光学5倍に近いので、Xiaomiがスマホに光学5倍と書くことには納得がいく説明ができます。ただ、こんな理屈はXiaomi自身も怪しいとは思っているようで、スペックページには光学倍率は書かず、ハイブリット10倍とのみ掲載し、Mi 10 Proに至っては光学5倍と筐体に書いてはいません。ハイブリットズームはデジタルズームを使用してもロスレスにできるズームのことなので、光学倍率とは関係ありません。
ハイブリット10倍ズームはF値を下げることで実現!!
この動画は、Xiaomi Mi Insiderといい、Xiaomiの技術を現場の研究者たちが教えてくれる動画です、この回はXiaomi Mi10 Proのカメラについて言っているので、参考にしていきます。望遠レンズについては3:46あたりからです。日本語に翻訳するとこうなります。
(司会):多くのXiaomiファンが疑問に思ってるんだけど、なんで10倍ハイブリットズームをペリスコープの代わりに用いているのかい?
(研究者):ええ、ペリスコープはとても高度な技術ですね。我々は詳細に評価・検討しましたよ、しかし、(最新技術より)ユーザーエクスペリエンスこそが我々の目標です。テストの結果、我々のハイブリット10倍ズームはペリスコープより優れているんだ。なぜかって、大口径レンズを使っているからさ。
YouTube Xiaomi
大口径レンズとはF値が小さいレンズのことで、より光を集めることができるレンズです。この3.8倍光学望遠レンズのF値はf/2.0ととても小さく多くの光を集められます。Xiaomiの発現をペリスコープレンズのF値と比較し検証してみましょう。
Huawei P40 Proの光学5倍ペリスコープはf/3.4、OPPO Find X2 Proのハイブリット10倍ペリスコープはf/3.0なので、実際にXiaomi Mi 10 Proのハイブリット10倍レンズのほうがF値小さく有利であることがわかります。おそらく、プリズムを使ったり、レンズを大きくできないなどで、F値をペリスコープは下げにくいのでしょう。

それに対し、Xiaomi Mi 10 Proはこのように1/4.4とイメージセンサー自体は、ほかのあらゆるレンズよりも小さいにも関わらず、1億800万画素メインセンサーに次ぐカメラユニットの大きさとなっています。これにより、イメージセンサーの小型化により、弱くなった低照度撮影を光をF値の低いレンズで集めることにより、カバーすることでハイブリット10倍を実現しているのです。なかなか面白くないですか?
ちなみに2倍光学望遠レンズ(ポートレートカメラ兼用)も用いることにより、中距離望遠も強くなっているのでその点もGOODなポイントです。
スマホ | 構造 | DXOMARK Zoomスコア |
Huawei P40 Pro | ペリスコープ光学5倍 | 115 |
Xiaomi Mi 10 Pro | ハイブリット10倍 | 110 |
Huawei Mate 30 Pro | 光学3倍 | 98 |
OPPO Find X2 Pro | ペリスコープハイブリット10倍 | 97 |
Google Pixel4 | 光学2倍 | 81 |
iPhone 11 Pro Max | 光学2倍 | 74 |
カメラレビューの最大手DXOMARKのレビューのZOOMの点数は、望遠を昔から極めてきたHuawei P40 Proには敵いませんでしたが、ペリスコープを採用し、Mi 10 Pro同様のハイブリット10倍ズームを搭載した、OPPO Find X2 Proより遥かにZOOM点数が高いことは、センサーサイズを下げて、光学倍率を上げ、デメリットとして低照度に弱くなったのを、F値を下げて補うXiaomiの判断は正しかったということでしょう。ただ、光学5倍というのは大袈裟な書き方なので、辞めたほうが良いと思いますよ。Xiaomiさん。まぁ、Mi 10 Proでは書かなかったので批判が多かったのでしょう。ちなみに、iPhone 11 Pro Maxはこの中で最も高価ですが、最も望遠性能は低いです。別に何も言いませんが、appleさんはそういう会社なのです。
そんな、素晴らしい望遠レンズ(もちろん1億800万画素メインが最大の売りです)を搭載しているMi Note 10はAmazonでも販売されています。値段は約5.5万円ととてもお安いのです。Amazonで気軽に買えるところもいい点ですね。
Mi 10 Proに関しては詳細は「108MP,Xiaomi Mi 10 Proはコスパ最強」をご覧ください。AliExpressで879ドル程度まで下がってるのでお買い得ですね!
今回の記事はXiaomi Mi 10 Proの望遠の秘密を見てきました。この望遠の秘密シリーズは4部構成でこの記事は第2部です。第1部はHuawei P40 Pro+が光学10倍を実現するために何故光を5回も曲げる必要があったのかを解説しています。見てみてください。第3部は「Samsung が光学4倍で最大100倍を実現した理由」を予定しています。(変更)4部はできるかわかりませんが、Pixel 4のAIによる望遠を見ていこうと思っています。乞うご期待!!(と言いつつ全然続編を出さない筆者であった)
カメラの仕組みについてはこの本で勉強してます。イラストいっぱいで分かりやすいです。カメラやレンズに興味のある方はおすすめです。
【追記】
望遠の秘密シリーズの第三部はPoco F2 Pro(Redmi K30 Pro)の業界初搭載のテレマクロについての記事を書きました。テレ(望遠)なのにマクロって気になりません?徹底解説したのでぜひ見ていってください。