
ジンバルってなんだっけ?

ジンバルは次元の違う手振れ補正機能さ。
vivo X50 Proはスマホカメラを再定義するスマホだ。
筆者は購入を検討しているので詳細にみていきます。
【追記】6/1にvivoから公式に発表されたのでその情報をもとに大幅に加筆修正しました。
スマホ業界の手振れ補正今昔物語
vivo X50 Proは疑似ジンバル搭載スマホです。しかし、この疑似ジンバルの凄さを知るために、まずは、スマホの手振れ補正の歴史を見ていきましょう。スマホの歴史はまさに手振れとの闘いでした。

まずは、光学式手振れ補正(OIS)です。光学式手振れ補正はスマホのカメラの基部であるアクチュエータにブレが起きたら、物理的に動き補正するという仕組みを搭載しています。これはスマホの分解してみて、カメラを触れば動くかどうかで分かります。iPhoneでは7以降に搭載されるようになりました。ただ、この機構はコストが高くとりわけ中国スマホでは、Huaweiでさえ、P40に搭載しなかったりと省かれることが多い部分でもあります。実際、動画撮影において、OISでは歩き程度の手振れぐらいしか抑えることはできません。

続いては、電子式手振れ補正です、これは、ソフトウェア依存のGoogle Pixelが得意とするもので、OISと組み合わされてハイブリッド手振れ補正と言われたりもします。OISと組み合わせで用いるのでかなり強力な手振れ補正ですが、欠点があります。Pixel 3で実際に筆者は使用しているので身に染みて分かりますが、撮影した動画をクロップして用いるのでかなり、画角が狭くなってしまいます、なので、筆者は広く撮りたい場合、この手振れ補正機能をオフにして用いています。この、電子式手振れ補正は現在ではほぼすべてのスマホに搭載される機能になっています。(性能に多寡はあれども)

そして、今、流行りなのが超広角電子式手振れ補正です。電子式手振れ補正と全く同じ原理なのですが、昨今の多眼スマホには標準的についている、超広角カメラでの撮影に対して強力なクロップによる電子式手振れ補正をかけることで、走っても”あまり”ぶれない手振れ補正を実現しています。Go Proなどのアクションカムもこの方法をとっています。この分野はスマホではSamsungが強く、筆者の所持する、Galaxy A51もものすごく強力な手振れ補正で走ってもぶれませんでした。ただ、超広角カメラはメインカメラよりも各社コストを削減し、800万画素などの低画素数のものも多いため、この超広角電子式手振れ補正は低照度の撮影にめっぽう弱いです。HuaweiはMate 30 Pro以降、動画撮影用の1/1.54の大型イメージセンサーを超広角で使用することで、このデメリットを軽減しましたが、それでもなお、低照度動画撮影能力が低く、まだまだ超広角電子式手振れ補正は発展途上のようです。もちろん、最新スマホであるP40 Proにも搭載されています。正直、OISより超広角手振れ補正のほうが手振れを強力の抑えられます。

そして、vivo X50 Proが搭載するのが、ジンバルです。これは、vivoがPVで述べているように、「Photography Redefined(写真撮影の再定義)」するほど革命的な手振れ補正機能です。
疑似ジンバルが再定義する動画撮影の常識

ジンバルはDJI OSMO POCKETやXiaomi FIMI PALMに代表されるもので、詳しくは別記事「DJI OSMO POCKET vs Xiaomi FIMI PALM」で述べましたが、物理的に手振れを抑えるので走っても全くぶれない脅威の手振れ補正を実現しています。これは、OSMO POCKETの三軸ジンバルのような特殊機構が必要なので、スマホに搭載するのは絶望的かと思われてきました。

しかし、vivoはそれをスマホに搭載してきました、はじめはAPEX 2020というコンセプトモデル(別記事)に搭載され、この機種は市場にでることはないので、まだ、当分ジンバル搭載するスマホは出ないんだろうなと思いましたが、なんと、すぐにvivo X50 Proで市場にvivoは出してくれました。さすが、変態スマホを多数出してくれるvivoだけのことがあります。

vivo X50 Proは6/1に発表されますが、このジンバルのモデルとなったスマホがAPEX 2020です。ページにはこの疑似ジンバルカメラについて詳細に書いているので、全訳してみていきます。
埋め込まれた小型疑似ジンバルにより、伝統的なOIS(光学式手振れ補正)よりも安定角度が2倍も向上しました。このジンバルは前後・左右の傾斜方向の両方の光学式安定を実現し、品質を高水準に保ちます。さらに、メインカメラの夜間撮影能力もこのジンバルにより強化されました。
筆者訳 image: vivo
このように、この疑似ジンバル機構はOISよりも2倍も手振れ補正がきき、なおかつ、手振れを極限まで抑えることができるので、低照度での写真撮影能力も向上します。

X50 Proの疑似ジンバル(正確にはダブルポールサスペンション構造)は、手振れ防止角度は±3°、一般的なOISは±0.7°(vivoのOISは±1.3°)だそうで、従来のOISの約3倍も効くそうです。これにはかなり期待させられます。
IMX586のカスタムチップであるIMX 598を搭載

写真、動画撮影で重要なのはイメージセンサーです。イメージセンサーは2019年に各社が採用したIMX586のカスタムチップであるIMX 598を搭載しています。
IMX598はIMX586のカスタムチップで、IMX586より10%感光性能が向上しています。ただ、今年のフラッグシップのイメージセンサーに比べるとセンサーサイズはかなり小さく、1/2しかありません。これはおそらく、ジンバルの構造上センサーサイズを小さくせざるおえなかったのでしょう。リークでは1/1.3のISOCELL GN1にジンバル搭載という噂もあったので、少し残念な気もしますが、ジンバルの性能でどれだけ巻き返せるか期待したいところです。(X50 Pro+にISOCELL GN1は搭載されましたが、残念ながらOISで疑似ジンバルは非搭載です)

なお、ジンバル構造を用いるため通常のカメラユニットよりX50 Proは明らかに大きいため、大口径レンズを用いることができ、F値1.6をたたき出しています、これにより感光性能は26.5%向上しているそうです。これらによりX30 Proのより大きい1/1.7程度の6400万画素イメージセンサー(IMX686という噂もあります)と比較して39%も感光性能が上がっているそうです。センサーサイズ以上にカスタムチップと大口径レンズが勝っているということのようです。IMX686などの6400万画素メインセンサーは昨今のミドルレンジ価格帯のスマホによくついているものですが、それらより感光性能が良いらしいので、期待できそうです。
ジンバルにより低照度撮影も強化

ジンバルによる手振れ補正・カスタマイズされてIMX 598・大口径レンズにより低照度撮影に強くなります。さらに、vivoの夜景モード「Super Night Mode 4.0」により綺麗な夜景撮影をすることができるそうです。
GoogleがPixel 4で世間を驚かした天体撮影モードも搭載しています。ソフトウェア処理を組み合わせて銀河まで美しく撮影することができます。この中国の美しい風景と共に出ているvivoのPVで恐ろしいほどきれいに星空が撮れています。これは楽しみですね。
Motion AF Trackingとジンバルで動画撮影も快適

vivo X50 Proは動画撮影時にあらゆる画面上の動く物体をAFし続けることができますことができます。この機能は物体がカメラから3秒以内であれば隠れても再度フォーカスすることができます。かなり便利な機能ですね。

もちろん、動画撮影時は疑似ジンバルにより手振れは抑えられ、安定した動画撮影ができることでしょう。

加えて、3次元的に音を発している人間を特定し、フォーカスしZoomしとらえ続ける、Sound Zoom機能や、1300万画素ポートレートカメラを用いたボケ動画や被写体以外の色を変えるカラーフィルターも搭載されています。なかなか
メインカメラ以外のカメラ性能も凄い!光学5倍!!

メインカメラに注目して語ってきたので他のレンズも見ていきます。
望遠性能はX30 Proから後退
ほかのレンズ構成は望遠に関してはこだわっていた先代のvivo X30 Proから後退しています、ただ、望遠を推していない本機種にしては十分な望遠性能を誇っています。

X50 ProはX30 Proと同様に二種類の望遠レンズを用いています。基本的に光学5倍ペリスコープレンズを搭載すると遠距離の望遠には強いですが、近場の望遠が弱くなります、そこでvivoはX30 Proでは3200万画素光学2倍レンズ(f/2.0)と1300万画素光学5倍レンズ(f/3.0)を用いて完璧な望遠性能を出していました。vivo X50 Proも同じ手法をとっていますが、イメージセンサーの画素数が1300万画素、800万画素に低下しています。さらに、F値も低下しています。
vivo X30 ProとX50 Proは同じ光学倍率なのでぱっとみ同じような望遠性能に見えますが、一般に望遠レンズはイメージセンサーのサイズを小型化すれば光学倍率が延びるので、レンズの質もイメージセンサーの質も劣化しています。これは少し残念なポイントですが、ペリスコープレンズがあるだけでかなり嬉しいので個人的には問題はないです。疑似ジンバルとペリスコープの両方をこだわっていたら、値段が上がってしまうのでここが妥協点なのでしょう。

なお、1300万画素光学2倍望遠レンズはポートレートカメラも兼用しボケ写真・動画を撮影するのにも役立ちます。このボケ写真は低照度でも綺麗なボケ写真を撮ることができるそうです。なかなか期待できそうですね。
超広角は800万画素と微妙だが妥協点

超広角は800万画素と微妙でマクロレンズも兼用しています。超広角マクロは2.5cmから撮影することができますが、画角が広いところからクロップしてマクロ撮影をするため、画質が大幅に劣化します、元が800万画素しかないため期待はできないでしょう。通常であれば、筆者は超広角信者なので、800万画素であればものすごく叩きますが、今回は叩きません、理由は簡単です。序盤に示した通り、このスマホは疑似ジンバルにより手振れ補正を用いており、超広角電子手振れ補正での動画撮影の道を選んでいません。したがって、超広角カメラは写真撮影でしか活躍しないため、低画素でもそこまで支障にはならないでしょう。妥協点ですね。
地味に嬉しいカメラ機能が搭載

カメラ機能はなかなか面白い機能が揃っています、まずは「影を消す機能」です、これ最高ですね。物撮りなどをするときに影が出るといい写真が撮れないことが多いです。それをAI処理で消してしまうそうです。なかなか嬉しいですね。同様に動いている人間も消して写真を撮ることができます。こちらも人通りが少々いる場合はには便利でしょうね。

古い写真を再生するという変わった機能もついています。本当にvivoは面白いですね。大昔のCD-ROMに眠っている写真をvivoのスマホで復元するのはいかがでしょうか。
ミドルハイにふさわしいスペックを持った名機種
カメラ性能について詳しく見てきたのでそれ以外のスペックも見ていきます。
90Hz湾曲有機ELディスプレイは最高

ディスプレイは有機EL搭載で、今年のトレンドである90Hzハイリフレッシュレートを採用しています。HDR10+にも対応です。

画面サイズは6.56インチで、左上にパンチホールインカメを備えています。湾曲ディスプレイを採用しており、現代的なスマホの特徴を兼ねそろえています。素直に嬉しいですね。もちろん、有機ELなので画面内指紋認証です。
Hi-Fi搭載で音楽に没入できる

AK4377Aを搭載しHiFi(High Fidelity;高忠実度)に対応しました。音声再生の際ひずみが抑えられるそうです。ただし、イヤホンジャックには非対応なため、USB Type Cイヤホンかワイヤレスイヤホンを用いる必要があります。音楽好きにはたまらない仕様です。
SoCはSnapdragon 765Gで33w急速充電

ミドルハイと述べた通り、SoCはSnapdragon 765Gでの5G対応となります。765Gは5G統合型 SoCでコスパが良く、antutuは約30万点もあるのでよっぽどのゲーマーでない限り快適に使用することができます。充電速度は33wで30分で57%も充電されます。ただし、Qi充電には対応していません。vivoはQi充電対応スマホを出していないため非対応なのは自然でしょう。
vivo X50 Proの値段は少し高めで6万円台

今回、vivoはX50,X50 Pro,X50 Pro+の三機種を発表しました。すべての機種の価格が判明しているので見ていきます。

さて、肝心のこのスマホの価格は8GB+128GBのモデルが4298元、8GB+256GBのモデルが4698元となっています。日本円に換算すると約6.5万円~です。なかなか強気の価格設定ですね。しかし、ジンバルやペリスコープレンズ、90Hz、湾曲有機EL、HiFiなどなどの素晴らしい機能が搭載されていると考えるとお買い得な価格でしょう。筆者はこのX50 Proの疑似ジンバルに惚れているので購入します!
発売日はX50が6月6日、X50 Proが6月12日となっています。発売日が楽しみです。
【追記】既に販売しているのをアリエクスプレスで見つけました。660ドルと定価に比較的近くお買い求め安くなっています。これはなかなかいいですね。
X50はジンバルもペリスコープレンズもないモデルでそこまで興味深くはないので割愛しましたが、X50 Pro+はSDM865を搭載し、世界初のSamsungの1/1.3超大型イメージセンサーであるISOCELL GN1も搭載しているのでなかなか面白いのですが、ジンバルは搭載していません。こちらに関してはイメージセンサーを中心に別記事でまとめましたので、メインカメラ以外もすべてのカメラが刷新されているのでもはや同じくくりにはできそうにないので、別記事にまとめました。ぜひご覧ください。こちらもなかなか面白いスマホですよ。